2015年11月4日放送 日本テレビ系列「ザ!世界仰天ニュース」の内容を詳しく解説
頸椎(首の骨)は7つの骨からなります。第7頸椎椎の骨は首の後ろに触れるので自分で触って確認できます。頸椎の中に脳からつながる神経の太い束,脊髄(頸髄)が通っています。頸椎が脱臼したり、骨折したりすると中を通る脊髄が傷つきます。これを脊髄損傷と言います。高齢者や体格的に脊髄が通る脊柱管が狭い人は、軽い転倒でも脊髄が傷つく事がありますので注意が必要です。脊髄損傷には損傷された脊髄から下が完全に麻痺してしまう完全麻痺と運動知覚機能が残存している不全麻痺があります。
どの部分の頸椎を損傷するかで麻痺の状態が異なります。損傷した脊椎と麻痺(完全麻痺の場合)の関係ですが、頸椎の6・7番を損傷しますと、下半身は完全麻痺となり、かろうじて腕は動くが指先は動きません。4・5番を損傷しますと、首から下が動きません。さらに上の1~3番をの頸椎を損傷しますと、首から下が動かず自発呼吸ができません。呼吸の神経が麻痺してしまうので人工呼吸でしか生きていくことができません。
一度完全に傷ついた脊髄は二度に元に戻り回復することはありません。脊髄損傷の急性期にはステロイド大量治療を行なう事があります。また、循環器や呼吸器、交感神経系、排尿や排便の異常を伴う事が多くありますので全身管理、治療が必要です。脊椎が骨折や脱臼、変形したり、脊髄に骨がくいこんでいる場合は、脊椎の前方や後方から脊髄の圧迫を取り除き(除圧)、インプラントで固定をする手術を施行することがあります。そして長期間にわたり残された機能を高めるリハビリテーションを行ない、自立や社会復帰を目指します。
近年の再生医療研究の進歩でiPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)を損傷された脊髄に移植する治療が現実的になりました。現在は臨床治験の段階ですが、近い将来、損傷された脊髄に細胞を移植する事で麻痺を回復させることが可能になる日が来るでしょう。脊髄損傷の患者様は希望を捨てることなく、実現できる日をお待ちください。